写真・図版
会見する福岡資麿厚生労働相=2025年1月10日、東京都千代田区、足立菜摘撮影

 季節性インフルエンザが急速に広がり、一部の製薬会社が抗インフルエンザ薬の出荷を停止していることを受け、福岡資麿厚生労働相は10日の閣議後会見で、医療機関や薬局に対し、過剰な薬の発注を控えるよう求めた。抗インフル薬は約1500万人分の在庫を確保しているとし、「適正な使用や発注によって対応できると考えている」と述べた。

 厚労省によると、2024年度は2432.5万人分の抗インフル薬を供給する計画となっている。

 ただ、昨年12月23~29日の1週間のインフルエンザの感染者数は、定点医療機関あたり64.39人と、1999年に現在の方法で統計を開始してから最多となった。想定以上の患者数で製造が追いつかないことを理由に、タミフルを製造する中外製薬、ゾフルーザを製造する塩野義製薬、タミフルの後発薬を製造する東和薬品と沢井製薬の各社は今月、相次いで抗インフル薬の出荷制限や出荷停止の対応をとると公表した。

 抗インフル薬は後発薬があるタミフルの処方が多くなる傾向にあるが、他にもリレンザやイナビル、ラピアクタ、ゾフルーザもある。厚労省の集計によると、1月5日時点で製薬企業や卸業者は約1500万人分の抗インフル薬の在庫を確保している。

 福岡厚労相は会見で、医療機関や薬局に対し、「過剰な発注を控えることや代替薬の使用について考慮することなどについて、協力を要請した」と述べ、タミフルが不足している場合は、タミフル以外の抗インフル薬を検討するよう呼びかけた。

 急激なインフルエンザの拡大について、厚労省の担当者は「理由は一つではなく、はっきりとはわからない」と話す。今年度のワクチンの出荷量も昨年度より少し減っている程度で、接種者が大きく減っている状況ではないという。

 また、国立感染症研究所によると、現在流行しているインフルエンザウイルスは、09年にパンデミックとなったA型(H1N1)で、昨年度も流行していた。今シーズンに使われているワクチンもH1N1に対応している。

共有